1 現状
介護業はサービス業に含まれますが、株式会社帝国データバンクによれば2023年1月~6月のサービス業の法的整理による倒産件数は958件(小売834件、卸売459件)であり、全体の23.9%を占めます(前年比33.3%増)。
当法人においても介護事業者の破産は数年おきにコンスタントに取扱いがある状況で、我が国の人口動態と介護事業者間の競争状況を踏まえると今後も一定数は生じてくるものと推測されます。
2 利用者の移転先確保が急務になる
他の業種とは異なり、事業それ自体が顧客(利用者)の生命・身体の安全に直結するため、いかに資金繰りが厳しくても利用者の移転先確保を最優先しなければなりません。
労働者に対して賃金すら払えない状況になってから移転先確保に動くのではなく、その前段階から労働者の力も借りて移転先確保に動くようにしましょう。
介護事業は基本的に労務提供型のビジネスであり、製造業などとは違って大がかりな機械や大量の在庫商品を持つことがないため、利用者の移転先確保さえ終わってしまえば残余の処理は比較的に容易であることが多いです。
3 建物の明渡し
介護事業の特徴として、飲食店等と比較して業務遂行に必要な床面積が多くなる傾向にあることが指摘できます。ベッド等がリース物件であれば業者が引き揚げますが、自己所有だと処分に苦労することがあります。
同業他社が利用者を引き継ぐ場合、同業他社においてもスペース不足の問題は生じやすいため、賃貸人と交渉して同業他社には居抜きで新たに賃借してもらうことがあります。この場合、破産会社は費用のかかる明渡しを免除してもらうことになりますので、破産申立費用の削減に繋がります。