債務整理が家族に与える影響について
「債務整理をしたら家族に迷惑がかかるのでは?」と思われている方も少なくないかと思います。
ケースバイケースではありますが、結論として、債務整理によりご家族に多大な迷惑が生じることは少ないといえます。むしろ、然るべきときに債務整理を行わず、借金が巨額にのぼってしまった場合の方がご家族に迷惑をかけることになるといえるでしょう。
それでは、さっそく、債務整理(①任意整理、②破産、③再生)によりご家族に与える影響を見ていきましょう。
1 任意整理
任意整理は、弁護士が債権者と交渉して、残債務額の分割払いの交渉等を行うものです。
ほとんどの場合、債権者から同居親族の給与明細・通帳などの提出までは求められませんし、ご家族が連帯保証でもしていない限り、債権者から家族に連絡が行くこともありません。
したがって、任意整理は、原則として、ご家族に迷惑をかけることがない手続といえるでしょう。
2 破産
破産は、任意整理と異なり、裁判所を利用する公的な手続です。裁判所に破産申立人の財産関係・収支関係などを開示し、一定の財産については換価して、債権者に配当し、最終的には「免責」(平たくいえば、借金を無くすことです。)を獲得します。
裁判所に提出する書類は破産者自身の財産関係資料・収支関係資料等だけかというとそういうわけではなく、同居親族の通帳等の提出も求められるのが一般的です。資料の提出について協力してもらわざるを得ないという意味で同居親族には迷惑をかけることになります。
ただ、詐害行為といって、いわば「財産逃がし」のようなことをやっていない限りは、同居親族の財産が没収・換価などされるといったことはありません。破産するのはあくまで破産者自身であって、破産者の同居親族ではないからです。
破産のデメリット
破産の一般的なデメリットとしては、①信用情報登録されて信用取引ができなくなる、②一定の職業に一定の期間、就職できなくなる、③保証人がいる場合には保証人に請求が行ってしまう、④一定の財産(自動車・不動産など一定額以上の高価なもの)は換価されてしまう、といったことが挙げられます。
上記①について、破産者自身はクレジットカードの使用等ができなくなりますが、同居親族自身のカード使用に支障が生じるわけではありません。上記②について、破産者の家族については何らの就職制限も生じません。上記③については、親族が保証人になっている場合、避けることのできない大きなデメリットとなります。最悪、保証人となった親族の破産等も検討する必要があります。上記④については、前述のとおり、家族の財産まで換価等されるわけではありませんので、直接的な迷惑はかかりません(勿論、妻が破産者である夫名義の自動車に乗っていた場合、妻は「足」に困ることにはなります・・・)。
以上のとおり、家族が保証人になっていない限りは、家族が被る迷惑は、裁判所への資料提出のほかは、破産者が財産等を失うことから生じる間接的なものにとどまります。
3 再生
再生は、平たくいえば、債務(≒借金)を大幅にカットした上で、3~5年で弁済していく手続です。裁判所を利用する手続であることは破産と同じですが、再生は財産の精算を前提としない点で破産とは大きく異なります。
同居親族の財産関係資料等の提出が必要になること、破産で述べた①及び③のデメリットは再生にも当てはまりますが、②及び④のデメリットは生じません(但し、自動車についていえば所有権留保、不動産についていえば抵当権など、担保権が付着している場合には再生といえども当該財産は原則として失われることになります。)。結果、家族の被る間接的な迷惑も破産に比べれば少なくなることが多いです。
借金の返済ができない状態は、収入・資産が大きく増加するか、支出が大きく減少しない限り、解消されません。これらの見込みがないにも関わらず、借金の返済のために親族からも借入れを行い、その後に破産等してしまうと、親族からも見放され、破産等した後の生活再建が困難になってしまいます。
破産等した後に助けてくれるのは、やはり、広い意味での家族です。
自力での借金返済不可能な状態が解消できる見込みがないのであれば、家族に多大な迷惑をかける前に、破産等の債務整理を行った方がよいといえるでしょう。