1 本来の債務整理の在り方
借金などの債務を返済できなくなった方に対するリーガルサービスは、大きく分けて
①任意整理(裁判所を通さずに債権者と直接交渉して和解し弁済していく手続)
②破産(裁判所を通じて資産を換価して債権者に配当し、払いきれない借金等を免除する手続)
③再生(裁判所を通じて借金等を大幅にカットした上で支払っていく手続)に分けられます。
これらの手続のうちがどれを選択するのかは、債務者の置かれている具体的な状況によって異なります。
たとえば、当法人では、相談者様には家計収支表を書いていただき、任意整理(①)をして支払っていける見込みがあるかどうかを確認した上で任意整理を勧めていますし、不動産や自動車の有無、破産によって制限される職種かどうか、またこれらを維持する必要性があるか、なども確認して、相談者様にとってどの手続を選択することが最良となるかという観点からアドヴァイスをしています。
2 散見される不適切な債務整理の例
最近、全国に支店展開している法律事務所に債務整理を依頼したが、結局、上手くいかず、当法人に来られたという方が増えています。こういった方々から聞き取った不適切な債務整理の例は次のとおりです。
(1)電話に事務員が出るだけで弁護士が出てこない。また、家計の状況や資産状況などもほとんど聞かれない。
(2)相談者の家計状況に照らせば明らかに任意整理をしても支払っていけないにもかかわらず、任意整理を行っている。案の定、任意整理後に払っていけなくなり再度相談すると、破産・再生を勧められてさらに着手金等を請求される。
相談者の置かれた状況を聞き取らずに任意整理を勧め、その後、支払いができなくなった相談者に対してさらに破産・再生を勧めるというケースが多く見られるようになってきています。
この場合、任意整理の弁護士費用が無駄になるだけではありません。初めから破産を選択するのが妥当な事案では、任意整理に基づいて支払った弁済金も本来であれば支払う必要がなかったわけですからその分も無駄になります。さらにいえば、不必要な任意整理に基づいて弁済を続けていた「時間」も無駄になります。その無駄な時間分だけ信用情報登録(世間一般で言われているところのブラックリスト)からの抹消も遅れます。
3 その他
上記2に関連して、「国が認めた制度」などと大袈裟なことをいって破産や再生を勧める広告なども増えてきています(ちなみに、所得税、市県民税、国民年金保険料、国民健康保険料等の公租公課はこれらの制度でも免除されません。そして、往々にしてそういったことは説明されていません。)。
そういった事務所が適切に債務整理業務を行っているのが分かりませんが、いずれにしても、相談者に会わないで手続を勧めようとする事務所には注意をした方がよいでしょう。